おすすめの旅行記・エッセイ 〈後編〉
バンコクに惑う / 下川裕治
インド帰りの若者は、やわらかな人当たりに
とろけ、日本からのツアー客はゆるやかに流
れる人々の暮らしに魅了される。そしてアリ
地獄にはまる。
深く足を踏み入れると脱け出せなくなるよう
な街・バンコクの魅力をいちばんよく知る著
者が、この国のこの街に憑かれた人々をやさ
しく描くヒューマン・トラベル・エッセイ。
バンコクという街は衛生的にもキレイではないし、渋滞や騒音も酷く、
決して住みやすい街ではないのだが、
バンコクの人々の持つひとなつっこさや寛容さが魅力的に映り、
ここに住み着いてしまう人が後を絶たない。
しかし、人々は、初対面では人当たりの良かったタイ人の微笑みの
裏側にあるものにだんだん気づきはじめる。
やっぱりバンコクには魔物が棲んでいて人々の人生を簡単に狂わせてしまう
ような気がする…
個人的に一番好きな旅行作家で、タイ以外にもアジア関連の本や雑誌を多数
出版していておすすめ!
海外ブラックロード / 嵐よういち
これから個人旅行に行く人に警告したい!あまり
知られてはいないが、行方不明になったり、殺さ
たりれたりする人がかなり多いのだ。
は、ミッシングの張り紙が多い。その貼り紙に載
っている人の父親とかが「この男を見ませんでし
たか?」と尋ねてくる。
俺の知り合いの従兄弟は4年まえにインドのニュ
ーデリーで殺された。
オナチ、差別の国コスタリカ、モンバサの追い剝
ぎ、バンコクの群犬、泥棒だらけのリマ、NYセン
トラルパークの変態野郎、傲慢なロンドン日本大
撃、無法地帯ナイロビ、侮辱的なイスラエル入国
検査、中南米のチーノ攻撃…
世界中を渡り歩いてきた著者が実際に体験した危険なエピソードを
集めた一冊。
この本は、シリーズ化されていて、中にはクレイジージャーニーで
有名になった丸山ゴンザレスが書いたものも。
地球の歩き方のトラブル実例集を読んでいるような感じで、それぞれの
エピソードが短くて読みやすく、集中力がない人にもおすすめ!
なにより気持ちいいぐらいにくだらなくて最高!
何でも見てやろう / 小田実
若さと知性と勇気にみちた体当た世界紀行。
留学生時代の著者が、笑顔とバイタリティー
で欧米・アジア22ヵ国を貧乏旅行して、先
進国の病根から後進国の凄惨な貧困まで、ハ
ラにこたえた現実を、見たまま感じたままに
書いたベスト&ロングセラーの快著。
今から50年以上前に出版された、「深夜特急」以前の貧乏旅行者
にとってのバイブル的一冊。
留学生としてアメリカに渡り、その後ヨーロッパ、アジアと1日1ドル
で旅を続ける。
かつてはテレビにもたくさん出演していて、その破天荒ぶりがよく知ら
れていた著者だが、旅のスタイルも破天荒!
なにより「何でも見てやろう」と思って実行できる日本人は、なかなか
いないのでは?
何の制約も受けず、臆せず、自分のやりたいことが出来る著者が、
うらやましい…
アジアパー伝 / 鴨志田譲
カモシダ青年は片道きっぷで単身タイに
乗りこんだ!....のはいいけれど、
その日の食事にも困る貧乏暮らし。ビデ
オカメラ片手に即席のフリージャーナリ
ストになって内戦のカンボジアへ。ささ
やかなギャラで命懸けの取材だ。おバカ
な人間たちとの出会いを通して描く激ヤ
バ異国体験記。サイバラ漫画も大爆笑!
西原理恵子の前夫で、映画「毎日かあさん」では永瀬正敏が演じた
フリージャーナリスト鴨志田譲がアジア各地で繰り広げる抱腹絶倒
の放浪記。
漫画とエッセイで構成されていて、漫画は西原理恵子が担当。
出てくる人たちみんな癖が強い。そしてどうしようもない!(鴨ちゃんも含めて)
この本もシリーズ化されていて、シリーズ最後のほうのサイバラ
漫画が切なくて泣けてくる!
ねむれ巴里 / 金子光晴
中国から香港、東南アジア、そし
てパリへ。夫人三千代との流浪の
旅は、虚飾と偽善、貧乏と愛欲に
明け暮れるはなやかな人界の底に
いつ果てるともなくつづく。「ど
くろ杯」につぐ、若き日の自伝。
時代は、太平洋戦争前の日本に暗雲が立ち込めはじめたころの話。
日本からの逃避行の末にたどり着いたパリでのどん底生活の様子を描く。
フェリーの中では自分のベッドの下段に寝ている外国人女性の肛門の臭い
を嗅いだり、パリでは「男娼以外は何でもやった」と本人が認めるように
、犯罪まがいの行為に手を出したりと、当時の日本だったら、真っ先に非
国民と呼ばれかねないような異端ぶり!
もともとが詩人なだけに難解な文章も多いが、それだけに人間の本質を
見極める力は秀逸!